『ナイフ投げ師』スティーヴン・ミルハウザー ― ボルへシアン特捜隊 報告書#3


ボルヘス流短編を渉猟する徒の、努力、というか労力は、そうリーズナブルに報われるものではない。だが「アタリ」を引いた時の爽快なまでの報われ感の大きさに、その渉猟を続ける意志を新たにするものだ。



第1短篇集『イン・ザ・ペニー・アーケード』から既に、私を含めボルへシアン特捜隊の面々から目を付けられていたスティーヴン・ミルハウザーだが、私見ではこの第3(もしくは第4)短篇集『ナイフ投げ師』で完全にその途の泰斗となった。「ネタ」はヴァラエティに富み、1篇1篇のクオリティは粒ぞろいで、しかも1巻に収められた12篇が互いに呼応し合い、エンドレスなエコーでボルヘシックな眩惑経験時間を他作家のどの短篇集にも増して長く味わわせてくれる。想えば、ボルヘス自身の短篇集からして、『伝奇集』あるいは『八岐の園』&『工匠集』のアタリ密度を振り返ってみれば、そしてさらには、それ以降の各種の短篇集を「そっち系」を求めて漁ってみての功少なしっぷりを鑑みてみれば、この『ナイフ投げ師』ほどはリーズナブルでないとすら言えるのだった。






 




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